なぜ自宅で過ごすことを決め、理想の最期が「家」なのか…患者に確認する
さまざまな患者さんと接する中で、まず最初に確認する大切なことは、なぜ患者さんが自宅で過ごすことを決め、理想の最期が家なのかというその理由なのです。
それは時に本人のささいな生活習慣であったり、その人の人生における大切なこだわりだったりします。その理由を知ることは、患者さんの思いに寄り添い共感し、ともに在宅医療を行う上で、大切な作業だと言えます。
肺がん末期の男性患者さん(84歳)がいました。1人暮らしの家の中は物であふれ、床は足の踏み場もないほど。トイレまでは伝い歩きで、食事は固形物は食べられませんがプリンやゼリーは食べられる程度。
友人が多く、人の出入りもある状況でした。その患者さんは近所でも評判なほど囲碁将棋が大好きな方でした。
当初は主治医ですら在宅での治療は難しいと判断していましたが、最期まで碁盤に触れ、囲碁将棋のテレビ番組を見て自宅で過ごしたいからと自宅での治療を望まれたのでした。
その患者さんは独居とはいえ、私たち訪問診療はもちろん、ご友人との関わりもあります。実際、患者さんの友人から「あいつが昨日からご飯を食べられなくて、熱もあって、ちょっと調子悪そうなんだよね。俺たちは10年来の友達だからわかるんだよ」という連絡をいただいたこともありました。