しっかり記憶したい内容は「拡張分散学習」がベター
立教大学の中田によると、このような説が支持されていた背景に「想起練習効果」と「想起努力仮説」があります。「想起練習効果」は、情報を思い出そうとする練習が記憶を強化する――。平たく言えば、パッと答えが出てくるための練習が記憶を強化するという考え方です。
一方、「想起努力仮説」は、想起するときの努力が大きいほど記憶保持が向上する。「アレ、何だっけな……あ! 〇〇だ!」というように、解答するまでに至る労力が記憶を強化するという考え方です。
この2つの方法を活用するためにも、「学習者が情報を思い出す際に適度な困難さ(望ましい困難)を経験する」ことが効果的な復習とみなされ、「拡張分散学習」はよいとされてきました。
ただ、近年は「拡張分散学習」の効果に疑問を呈する研究も増えており、前述の中田氏もそのような研究を行っています。ですが、この試行錯誤こそ科学的な行いとも言えます。
実際に、語彙学習の際などは「拡張分散学習」を応用している例などもあり、人によっては効果をもたらすケースでもあります。間違いなく言えることは、1回だけでの復習では記憶の定着は難しいということです。忘れたくないなら、復習はこま切れに実行するしかありません。