人生はやってみなければ分からない実験の連続 ときにはハズレを楽しもう
セカンドライフは、無理のない範囲で仕事をしながら気楽に暮らそう。そんなことを漠然と考えている人は、少なくないでしょう。私も、講演会や著書では、マイペースでの仕事の継続を勧めていますから、悪くないと思います。
ただし、ひとつ間違えてほしくないことがあり、それは「気楽に」の解釈です。それがストレスなく人生を楽しむということならよいのですが、ちょっとした選択を迫られたときノーリスクで安パイばかり選ぶような意識はあまりよくないかもしれません。
私は、いまでこそ本が売れるようになりましたが、50代はそうでもありませんでした。それでも年間30点ほどのペースで出版していて、かなりの量産です。そんなとき、ある人に言われました。
「もっと出版する数を絞って、『これぞ』というものに力を入れた方がいいのではないか」
いろいろ検討しましたが、私の結論はペースを変えることなく出版を続けるというものでした。そもそも本は、そんなに売れるものではありません。それなら、ペースを落とすより、ペースを維持して出版点数をキープする方が当たる確率が上がるのではないか。そう考えたのです。
手前味噌ですが、これを実行した結果、時々、売れる本に恵まれるようになり、おかげさまで昨年は「80歳の壁」が年間ベストセラーになりました。この経験から痛感したのが、「人生はやってみなければ分からない実験」だということです。その極意は、最初から決まったゴールや答えを求めないこと。そう考えると、人生が楽しくなります。
私は、ワインとラーメンが好きで、時々、奮発して高いワインを購入したり、行列のラーメン店に並んでみたりします。高級ワインの味がイマイチだと残念ですが、後悔はしません。30分並んだラーメン店がおいしくなくても、同じです。
ワインの購入も、ラーメン店の選択も、一種のギャンブルで、絶対に損をしない人生を歩んでいては、前頭葉が退化します。なじみのラーメン店ばかりに行って、それ以外の店にチャレンジしない人は、正解だけを求めて満足するだけ。私はつまらないと思います。
一方、いろいろなワインを試したり、気になるラーメン店を食べ歩いたりする人は、ときにはハズレもあるでしょうが、よりおいしいアタリの一本や一杯に出合える可能性があります。予測不能なギャンブルを楽しめるのは、前頭葉がきちんと働いている証拠です。
日常のハズレを楽しみ、アタリを求めて次の行動に移すことができれば、実験の連続である人生はより豊かなものになると思います。
■【プレミアム会員限定】オンライン講座
和田秀樹「『ボケ』とは何か」動画公開中
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4608
和田秀樹氏の著書「いつまでもハツラツ脳の人」(1100円)日刊現代から好評発売中!