「熱海」の夜はまるでゴーストタウン…名ばかり“V字回復”に地元民は複雑心境
若者は部屋飲みが主流
冒頭のタクシードライバーは、悄然とした面持ちでこう話す。
「宿泊客の獲得に向け、7000円台から宿泊可能な“素泊まりプラン”を打ち出す旅館やホテルが増えています。客の大半は大学生~20代前半の若者で、昼間は食べ歩き目当てに出歩いても、夜はコンビニで酒を買い込んで部屋飲みをするから、昔に比べて夜間の人出は非常に減り、タクシー業界も厳しい現状。商店街にある飲食店のオーナーも、客が来ないなら早々と店を閉めるのは当然でしょう。テレビでは熱海が奇跡の復活だの何だのと伝えているけど、この廃れっぷりを見れば勢いが戻ったとは言い難い」
市内のコンビニで出会った20代前半の女性2人組は、「今回の旅行はホカンス(ホテルバカンス)目的で来たので、事前にお酒とおつまみを買い込んで夜は部屋で過ごすつもりです。ぶっちゃけ外で飲むとお金もかかるので……(苦笑)」とこぼした。
夜も更けた午後11時過ぎ、銀座商店街を歩く人の姿はほとんど見受けられなくなった。辺りをうろついていると、明かりがともされたバーを発見。店内は地元の常連客で満席で、周辺の閑散ぶりからは想像できない賑わいを見せていた。
■スイーツ店の流行は嬉しい反面…
夜の街の住民たちは熱海の現状をどう受け止めているのか。バーを営む40代の男性は、「宿泊客が増加しても学生が多ければ夜の街が潤わないのは仕方がないこと」と話し、こう続けた。
「はやりのスイーツをきっかけに、熱海に足を運んでくれる人が増えたのは非常にありがたい。ただ、熱海といえば温泉まんじゅうやようかんなど、地元で代々続く老舗和菓子店も多い。ここ数年目立つのは新しいスイーツばかりで、少し複雑な思いもあります。古き良き熱海にも興味を持ってもらえれば、もう少し熱海は回復できるんじゃないかな……」
さびれた温泉街のイメージから、若者が集まる観光地へと変貌を遂げた熱海。宿泊客の増加が喜ばれる一方で、地元住民たちはおのおの悶々とする問題を抱えているようだった。