「CEATEC 2024」を現地ルポ 家電評論家・多賀一晃氏が注目技術を深掘り
嗅覚ディスプレーへの期待は大
今年のシーテックでは、特にAIが最大のテーマで、どのブースでも取り上げていました。その中でも私のイチオシは、太陽誘電のにおいセンサーと、においを再現する嗅覚ディスプレー。前者は工業技術研究所、後者は東京科学大学との共創です。
センサー(センシングデバイス)は、人間でたとえると五感にあたります。「視覚」「聴覚」「触覚」のセンサーはすでに開発されています。「嗅覚」と「味覚」のセンサー開発はとても難しいのですが、においは実現が近づいています。
においセンサーは、異臭検知などが主な用途ですが、たとえば嗅覚ディスプレーがあると、まったく異なる映像エンターテインメントが生まれる可能性があります。
古い映画を見てマリリン・モンローが出てきたら、シャネルの5番が香ったり、食リポでは料理のにおい、そして旅番組で名所を訪ねたら季節ごとの花の香りを感じたり……。リアリティーが全く変わる可能性を秘めています。
で、パーツメーカーである太陽誘電がディスプレーメーカーと提携し、そんな嗅覚ディスプレーを世に出せば、サイズ・解像度だけで選ばれている平面ディスプレーの選択基準が変わる可能性があるのです。
テレビが行き詰まっているのは、ディスプレーの解像度が人間の目の解像度に近づいたからで、開発が限界に近づいています。その状況でシェアを握るには、生産規模が重要で、日本より規模に勝る中国メーカーが強いのはある意味当然でしょう。しかし、嗅覚ディスプレーのような新カテゴリーだと、状況は一変します。
においのつながりで見逃せないのは、会場で見つけた開発中の「お燗番センサ」です。これも温度センサーではなく、においをセンシングしてお燗してくれます。
今年のシーテックは、どの技術にもセンサーが重要な役割をはたしていました。AIとは対になる技術で、最新の流れを感じるイベントでもありました。