青山学院中等部の“激戦区”参入で立教、明治、法政への影響は? “オール青学”の結束も追い風に
首都圏の中学受験戦線がクライマックスを迎えようとしている。小学6年の児童数は減少を続けているにもかかわらず、中堅クラス以上の中高一貫校や大学付属校の難易度は横這いか上昇。受験熱は過去最高とも伝えられる。「台風の目となっているのは青山学院中等部」と話すのは大手学習塾の幹部だ。同校の入試日は昨年までの2月2日から3日に変更された。
従来から3日に入試を行っていた有名私立校の教員は「受験者が減って、生徒の質が下がる」と悲鳴を上げる。青学の参入で優秀な受験者が逃げていくというのだ。
「3日は“準難関校”と呼ばれる中堅上位がひしめく激戦区。2日よりずっと多く、このクラスを狙う受験者には少しハードルが低くなって恩恵をもたらす」と塾幹部は予測。ただし、「さまざまな要素が絡み合い、一筋縄ではいかない」という。複数回の入試日を設ける学校が増え、偏差値の変動も激しく、受験者側も併願校をどう選べばいいのか判断が難しくなっているのだ。そうした中で渦中の青学は人気がさらに高まっている。
「各模試で青学中の志望者数が軒並み伸びている。前年より男子で2割以上、女子で1割以上増え、難易度も急上昇。まさに青学のネームバリューを見せつけている」(同)
そのブランド力を支えるのは「面倒見の良さ」と話すのは青山学院校友会の重鎮の一人だ。同会は幼稚園から大学院までの出身者全員が参加する同窓組織。「いわゆる“オール青学”です。結束力ではどこの学校にも負けない」と重鎮は胸を張る。箱根駅伝の活躍も結束のたまものだと強調する。
「原晋監督の手腕や選手の頑張りがあってこそですが、多くの校友たちが裏でサポートに力を注ぎ下支えしているんです」
オール青学は就職にも役立っている。OB・OGたちがエントリーシートの書き方から指導。有名企業に数多くの役員クラスを送り込んでいるのも強みだ。
■過去にはいじめ事件が
前出の塾幹部は「こうした組織力があるから青学中に人気が集まる」と話すが、その地位が大きく揺らいだことがある。12年夏、週刊誌が青学中で起きたいじめ事件を報道。すると、13年度入試の受験者数は前年度の955人から631人と一気に3分の2に減ってしまったのだ。その後も数年にわたって低迷が続いた。「この時期は大変だった」と振り返るのは付属校の運営にも関わったことのある青学大教授。「中等部のみならず、青学全体に傷がついたような感じでした。初等部や高等部も含め徹底していじめ問題に取り組み、克服することができた」という。
人気もようやく戻り、再び中学受験の主役の一校となった青学中。日程変更による影響は2日に入試を実施する学校にも及んでいる。
「青学がいなくなり、立教、明治、法政といった大学付属中の志願者が大幅に増えています。いい生徒がとれる学校側は大喜びでしょうが、受験者にはつらい状況といえそうです」(塾幹部)
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