ウェルビーイングな生き方を探る(上)役割意識と刹那的な価値判断に翻弄される日本人
高まる政治不信に加え、性加害、パワハラがはびこる日本社会。生きづらい時代の中で幸福を追い求めることはできるのか。日本の病の背景とウェルビーイングな生き方の可能性について精神科医の香山リカさんに話を聞いた。
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──集団内での性加害とかパワハラ、いじめなどが大きな社会問題となり、SNSの世界でも同じようなことが起きています。その背景は?
香山 ひとつは昭和時代、いやそれ以前から変わらない部分と、新たに出てきている問題があると思います。変わらない部分というのは、ある精神病理学者が指摘した“役割意識”です。たとえば女性だったら、誰々の妻とか母とかいったもので、役割イコール自分自身になってしまっている。その役割を奪われたら、所属場所にいられなくなる、排除されるという恐怖がつきまとっていて、その組織から逃げるということも考えられなくなってしまう。そういう社会がまだ残っている。
──サラリーマン社会も同じですね。