ウェルビーイングな生き方を探る(上)役割意識と刹那的な価値判断に翻弄される日本人

公開日: 更新日:

香山 多くの日本人にとって、いったん与えられた役割を失うというのは死に等しいことで、なんとしてでも役割を守らなければという思いの中で生きてきたわけです。

 ──その一方で、変化も表れてきています。

香山 ここ40年ほどですかね、女性解放とか、弱者の権利を守ろうとか、個人の意識とか、ようやく言われるようになった。長い長い歴史の中では、まだまだ最近のことです。でも、個人主義はまったくと言っていいほど浸透していません。結局は、常に組織の中で役割を失わないように忖度して、自分の立ち位置を評価しながら渡り歩く社会になっていますね。

■リアル社会に加えてSNSでも横行する同質性依存

 ──阻害要因は?

香山 日本が全体として経済的にも国際社会においても停滞し、少子化をはじめとする重い社会問題が浮上してきて、個人の自由を大切にという考え方を止めようとする動きが出てきたのです。その象徴が保守回帰です。個人としてではなく、勝ち馬に乗るしかないという風潮になってきて、優勢な側にみんなが一斉に乗り、そこでの自分の優勢さを保つために、自分と違う側の人たちを激しく罵倒したりすることで、自己確認しつつ、周囲に自分をアピールすることで、自分を守っている。個人が自分の意見を持って当然という余裕、懐の深さが日本の社会になくなってしまったように思えます。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出