スプリングバレーブルワリー 井本亜香社長(1)短大卒「一般職」でキリンビールに入社し「総合職」に転身
「短大卒の地方採用された女子にも、優秀な人はたくさんいます。難しい仕事に取り組み、毎日一生懸命やっているのに、どうして4大卒とは違うのか。こんな気持ちは4大卒の人には分かってはもらえないでしょう」
それでも、毎年希望を出し続け、希望はかなう。ノンキャリからキャリアへの転向は、前例があるのかどうかさえ分からないほど異例であった。なので、本人も周囲も、意外感は強かったのだ。
2000年10月から初めての東京生活が始まる。異動先は営業部門の海外ブランド担当。キリンが扱うバドワイザーやハイネケンの商品管理が仕事だった。セントルイスなど海外とのやりとりは、すべて英語でのメールが使われたが、短大で英語を学んでいただけに井本はすぐに対応できた。
キリンはこの頃アサヒから猛烈に追い上げられていた。翌01年には業界首位の座をアサヒに明け渡してしまう。48年ぶりの2位転落を喫する。こうした状況から、キリン人事部は社内秩序の維持や安定よりも、できる人材の登用による会社の競争力アップを優先させた……。その結果、井本の転換を認めたのかもしれない。