誕生から60年「スナック」は日本に10万軒以上 学術研究者に聞いた「変遷と最新事情」
近年、若い女性に人気の「スナック」。誕生した60年前は、若者はおろかフツーのサラリーマンも気軽には足を踏み入れられない、高級エリアにあるイケてる最先端の場所だった。とはいえ、スナックは今も昔も心のオアシス。その変遷をたどってみた。
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スナックといえば、ある年代以上なら、会社の上司に連れられ、また2次会はスナックだった、という諸氏も多いだろう。
「スナックの始まりは、意外にも新しく、1964年の東京五輪のときなんです。前身は『スタンドバー』と呼ばれた酒だけを出す業態でしたが、五輪をきっかけに風紀の取り締まりが厳しくなり、深夜喫茶など、深夜営業が禁止されたんですね。その抜け道として、軽食(スナック)を出すという名目で営業を始めたんですよ。ちょうど60年前のこと。スナックも還暦です(笑)」
そう語るのは、東京都立大学で教壇に立つ谷口功一教授。実は「スナック研究会」の代表でもある。
日本に10万軒以上あるといわれる「スナック」について学術的な研究がなされていない、と2015年に研究会を発足させた。30代からスナック通いを始め、全国津々浦々、今や顔を出せば「おかえり」と迎えられるスナックのエキスパートである。
スナックの歴史の中で切っても切り離せないものがある。それがカラオケだ。
「初期の頃のスナックは、今とはちょっと違った雰囲気でした。東京でいえば青山や赤坂など高級な盛り場にあって、イケてる最先端の場所。踊れるスペースもあり、ジュークボックスはもちろん、バンドが入ることもあったようです。70年代に入ると、『8トラ』(磁気テープ)が出てきてカラオケが定番に。その後、レーザーディスク、通信と発展しました。いわば、スナックはカラオケ文化の発祥地でもあるんです」