岸田首相の頼みは「経済」…実質賃金プラスをしくじれば「6月退陣」に現実味
中小の賃上げ苦戦としつこいインフレ
これなら実質賃金プラスに手が届きそうな感じがするが、現実は甘くない。
「大企業は今春闘も昨年に続き、高水準の賃上げを実現するでしょう。しかし、中小企業は苦しい。人手確保のため、昨年は無理して賃金アップしたが、今年は難しいとの声をよく聞きます」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
城南信用金庫と東京新聞のアンケート(都内と神奈川県内の城南信金と取引がある中小企業832社に聞き取り)によると、約35%が「賃上げの予定なし」と回答。「予定あり」の27%を上回った。賃上げしない理由として6割近くが「賃上げの原資がない」だった。
インフレの収束も怪しい。消費者物価指数は2%台に落ち着いたように見えるが、カラクリがある。昨年12月は電気代がマイナス0.87%、ガス代がマイナス0.26%と、上昇率を大きく押し下げていたからだ。
「電気代とガス代の大幅なマイナスは、政府の補助金が大きく影響しています。今年5月まで延長されましたが、その後、打ち切られれば、前年比の物価上昇率は押し上げられることになるでしょう」(総務省物価統計室)
厚労省の毎月勤労統計によると、昨年11月の実質賃金(速報値)は3.0%減と深刻だ。今年の春闘を経ても、賃金上昇がインフレ率に遠く及ばない事態が続けば、賃上げ結果が反映される6月の岸田退陣が現実味を帯びる。