新型コロナでは開発中止も…「アビガン」が世界初のマダニ感染症治療薬として復活
帰ってきた!──と言っても何も「ウルトラマン」のことではない。「アビガン」だ。
新型コロナ感染症の流行初期に、治療薬候補として安倍晋三元首相がしきりと肩入れしたことから「アベガン」などとも皮肉られた医薬品だ。一時は巨額の国家備蓄予算も付けられたが、2022年秋「十分な効果が得られず」として対コロナ薬としての開発中止が決定。
新型コロナの感染症法上の5類への移行とともに、その存在は人々の脳裏から遠ざかりつつあった。それが先週、全く別のウイルス性感染症の治療薬として蘇ったのだ。
「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)。マダニが媒介する感染症で、薬事審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会で治療薬として承認することが了承された。正式に承認されればSFTSの治療薬としては世界初となる。
■死に至るケースも
SFTSはマダニにかまれることで発症する。潜伏期間は6~14日程度とされ、まず38度以上の発熱。さらに嘔吐や下痢といった消化器症状を引き起こす。70歳以上の高齢者は重症化しやすく、死に至るケースも少なくない。