たった1つのアイデアで多くの人を動かす「インサイト」と似て非なる“3つの概念”決定的な違い
隠れたホンネでも人を動かすアイデアにならないことも
これは文字通り、調査などで「新たに見つかったこと」です。正確に言うと「ファインディングス」の中に「インサイト」も含まれることがあるのですが、拙著『センスのよい考えには、「型」がある』では、「人を動かさない」かつ「隠れたホンネ」を表す言葉としてあえて、自戒とともに分類しています。
このような「ファインディングス」は、調査からとにかく何か新しいことを発見しなければ!という、手段と目的が入れ代わってしまう場面などでよく発生します。「新たに見つかった隠れたホンネではあるものの、そのときの目的を達成するように人を動かすアイデアにつなげられない」という事態は、一時期流行った、徹底的に生活者を観察する文化人類学的な方法論を活用したエスノグラフィー調査(※)などでよく陥りがちでした。
(※エスノグラフィー調査 特定の集団の日常生活を詳細に観察し、理解するための研究方法。通常、現場で長期間にわたって対象者の普段の環境や行動の観察を行ない、人々の行動などを記録します)
◼️「隠れたホンネ」だけでは「人を動かさない」
例えば、新しい掃除機の商品開発をするために、生活者が掃除機をかける様子を注意深く観察したり、掃除に対する考え方を徹底的にヒアリングしたりします。その結果、もっともらしい結論として「掃除機をかけることとは、自分の気分を変えるための心の掃除でもある」といった「ファインディングス」が導き出されたとします。
これは、掃除機を使う生活者自身が気づいていなかった「隠れたホンネ」であるかもしれませんが、今回の目的である新しい掃除機を生み出すようなアイデアのヒントにはつながらず(発想が拡がらず)、「人を動かさない」というケースです。