たった1つのアイデアで多くの人を動かす「インサイト」と似て非なる“3つの概念”決定的な違い
何を目的として「人を動かす」ことを狙うのか
つまり、インサイト探索時には、自分たちは何を目的として「人を動かす」ことを狙っているのかを絶えず意識していないと、発見した満足感だけを追い求めてしまい、そもそもの目的が達成できない危険性があるということです。
このように「隠れたホンネ」ではあるが、自分たちの目的に合うようには人を動かさない、インサイトと似て非なるものを本書では、「ファインディングス」と呼んであえて区別します。
◼️インサイトは、「常識/定説」ではない
当然ながら、常識や定説と呼ばれるものは「人を動かさない明らかなホンネ」です。新製品会議の例で言えば、「見たままの数字、ありきたりの提案、誰もが知っていること」です。
例えば、ドリルの例で言えば「6ミリのドリルが売れていることから、DIYが流行っている」とか、掃除機の例で言えば「ターゲットは、今の掃除機に、吸引力とデザイン性の両方を求めている」といったようなことです。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが「インサイト」という言葉を熟考することなく、なんとなくの受け売りで使い、あまりに当たり前の常識や定説を、生活者の「インサイト」と呼んでいるケースが、実際のビジネスの現場でも多々散見されています。
「インサイト」は、その条件を満たし得る適切なものが発見できれば、この上なく強力な威力を発揮します。したがって、何が「インサイト」であって、何が「インサイト」ではないのか?を絶えず、丁寧に確認しながら考えを進めていくことが、急がば回れ的に、優れたインサイトにたどり着く近道になるでしょう。
▽佐藤真木(さとう・まき)
株式会社電通 第3マーケティング局 シニア・マーケティング・ディレクター
慶應義塾大学経済学部卒業。2004年、株式会社電通に入社後、主にマーケティングやブランディング、戦略立案に従事。大手クライアントから官公庁、地方自治体、スタートアップまで、100社以上のキャンペーン設計、広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ビジネスデザイン、企業ブランディング、地域ブランディング、アート思考研修などの企画、実施、ディレクションを行う。共著に『場所のブランド論』(中央経済社)、教育講座の執筆協力に『想像力を武器にする「アート思考」入門』(PHP研究所)がある。
▽阿佐見綾香(あさみ・あやか)
株式会社電通 第4マーケティング局 マーケティング・コンサルタント
埼玉県さいたま市浦和出身。早稲田大学卒業後、2009年、株式会社電通に入社。以来、マーケティング・コンサルタントとして、数多くの企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当した業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電など。大手企業だけでなく、ベンチャー・中小企業も担当するなど、幅広い業種・規模の企業を手掛ける。著書に、累計2万部越えのベストセラーとなった『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)がある。