たった1つのアイデアで多くの人を動かす「インサイト」と似て非なる“3つの概念”決定的な違い
「6ミリの穴がほしい」は「隠れたホンネ」ではない
このケースでは、「6ミリの穴を開けたい」というのは、お客さん本人は自覚して気づいている「明らかなホンネ」すなわち「ニーズ」です。「穴がほしい」という欲求が、すでに明らかになっている(お客さん自身が、言葉にして自覚している)ため、それ自体に気づくということはマーケターとして、特に難しいことではありません。競合も気づいているというような状態だと思います。
一方、「インサイト」は、まだ競合も消費者自身も気づいていない「隠れたホンネ」です。だからこそ、それを見つけて新商品やサービスを作ってあげたりすると、消費者自身も驚いて、「ああ、これがほしかったんだよなぁ」と強く共感してくれる、というのがインサイトの価値と言えるのです。
したがって、この「6ミリの穴がほしい」というニーズは、お客さん本人が気づけていないような「隠れたホンネ」ではないため「インサイト」とは呼ぶことはできません。
もしくは、次のようなシーンを思い浮かべると、ニーズがよりわかるかもしれません。例えば、画期的な新製品を生み出そう、と考える打ち合わせを想像してみてください。そのときに、ありがちですが「すでに成功しているもの」「パクリ」「二番煎じ」などが、まずは話に出るかもしれません。
これはみんなが当然知っている既知のことなので、打ち合わせではあまり驚きはありません。こういったものは明らかな「ニーズ」であるので「人を動かす」ことはわかっているが「隠れていない」(=打ち合わせ参加者全員が気づいている)ため、ピンチを突破する羅針盤として機能するような「インサイト」にはなり得ません。
◼️インサイトは、「ファインディングス」ではない
次に、よく調査などをしていると使われる「ファインディングス」という言葉です。横軸の「人を動かす」「動かさない」という軸で、「インサイト」と「ファインディングス」を分けることができます。例えば、会議中に「その人間心理、結構面白いね」とちょっと盛り上がったものの、「それって、今回の目的を達成することに役立つのかな?」とボツになった経験はありませんか? そのような発見が、いわゆる「ファインディングス」という発見です。