高校生には向かない「ポイント近く」のプロ理論
【横浜高校野球部コーチ・小倉清一郎 「続・鬼の遺言」】
神奈川1位で出場した秋季関東大会準々決勝で横浜は佐野日大に3―5で敗れ、来春のセンバツ出場は微妙となった。冬は打撃を強化しないといけないと痛感した。
ヤンキースのイチローの影響で、「作った左打者」が増えたことは前回述べた。これらの打者には特徴がある。利き腕は引っ張る方の右。ヤンキースなどで活躍した松井秀喜ら一部を除き、ポイントが前になる傾向がある。打球は利き腕で押し込んだ方が飛ぶ。総じて長距離打者が少ない。
プロ野球の理論、打撃の理想でいえば、ギリギリまで球を引き付けて軸回転で打てば、打球は速くなり、遠くへも飛ぶ。しかし、このプロ理論が高校野球に浸透し過ぎて「引き付けて打て」と誤解して教えている指導者が実に多い。また、新聞などで読んで知識だけは一人前の選手もしかり。はっきり言うと、これは間違い。高校生のポイントは、ある程度前にするべきなのだ。
プロと高校生では腕力などの体力、体の回転力等、全ての力が大きく違う。非力な高校生が無理に引き付けようとすれば、差し込まれて詰まってしまうのは当たり前。トップの位置からバットを使える距離が短くなるから、打球は飛ばない。