勢力図に異変…夏の甲子園「番狂わせ」続出の背景に何が?
■“強豪校”のネームバリューでは生徒が集まらない
選手と親の気質の変化も強豪校を悩ませる。甲子園で春夏通算5度の優勝を誇る名門・横浜で23年間指導した小倉清一郎コーチ(70)はこう指摘する。
「昔は甲子園に出ることが中学生を勧誘する際の口説き文句だった。それが大きく変わった。今の中学生と親は『監督や指導者が優しい高校に行きたい』と盛んに言うようになった。野球に集中できて食事も管理できる寮も、最近の子たちには敬遠されることがある。あの松井裕樹(楽天)は野呂雅之監督を慕ってというのもあるが、上下関係がある野球部の寮生活を嫌い、自宅から通える桐光学園に進学を決めたと聞きますから」
さまざまな制度も選手の分散化に拍車を掛ける。小倉コーチが続ける。
「08年に私学の特待生は『各学年5人以下』というルールができて、公立高校の授業料が無償化されたことで、『他の私立からも特待生で誘われている』とか、『特待生じゃないなら公立に行かせる』と条件を出す親が増えた。神奈川を見ても、県立校に素晴らしい投手がいたりするのが特徴。選手が分散するようになって、強豪校は受難の時代に入ったと実感します」