<第39回>修学旅行の小遣いも残ったら…節制の原点

水沢南中学3年の修学旅行のときのことだ。行く先は東京の浅草や浦安のディズニーランド。持っていく小遣いは1万2000~1万3000円と決まっていた。
大谷はその金額を持って行ったものの、全部は使わなかった。
自宅に戻ってくると家族へのお土産とともに、
「はい、これ、お釣りね」
と言って、残ったおカネをすべてカウンターのうえに置いた。
「いいの、しょう(翔平)?」
母親の加代子(51)がこう聞くと、大谷はこともなげに答えた。
「いいよ。だって、残ったんだもん」
中学時代、毎月の小遣いはほとんどなかった。必要なものや欲しいものがあれば、その都度、買っていた。しかし、平日の週2日と週末は一関シニアに出掛けて、友達と遊びに行く時間もなかったし、マンガ本を買うようなこともなかった。お年玉をもらえば、「預けておくから取っておいて」と加代子に託し、グラブを買うときの足しにしてもらったりした。
花巻東に進んでからも同様だった。1年生から寮生活。自宅にいるわけじゃないから、ジュース1本飲むにしてもカネがかかる。加代子は週末、練習試合を見たり、差し入れしたりするたびに、小遣いを置いてきた。
大谷がまだ1年生だったあるとき、加代子が「(おカネが)なくなったら、ちゃんと言うんだよ」と言うと、
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