貫禄出てきた稀勢の里 場所前の「疲労で休養」が成長の証
貫禄だけならば、誰よりも横綱らしい。
初日と変わらず、穏やかな笑みを浮かべて土俵入りした大関稀勢の里(30)。土壇場で粘る魁聖をものともせずに寄り切り、2勝目を手にした。
今年初場所の終盤から落ち着いた相撲が多くなり、綱とりも先場所から継続。重圧に弱いという欠点もいまは鳴りを潜めている。それでも過去が過去だけに、ファンが信頼し切れないのも無理はない。
さらに今場所前は、“らしくない”言動を見せた。2、4、5日の二所ノ関一門の連合稽古で汗を流すと、6日は完全休養。稀勢の里は「3日間の稽古はこたえる」と苦笑いしたが、場所直前に休むのは異例中の異例。しかも理由が疲労だ。体力自慢といっても、もう30歳。連日の酷暑もあり、若い頃のようにはいかないのだろう。
だがしかし、ある親方は「休養したからこそ期待できる」と、こう続ける。
「ようやく自分を客観的に見られるようになった証拠ですよ。これまでは疲れていようが何だろうが、場所前はガムシャラに稽古をしていた。事実、無理してでも乗り切れる体力がありましたからね。しかし、年を取れば取るほど、猪突猛進ではやっていけない。遅まきながら、ようやくそれに気付いたのでしょう。ここ数場所は冷静な相撲が目立つように、カラッポと言われた頭の中身も変わってきている。休養を選べるようになったことは、成長の証しですよ」
体力が落ちたといっても、15日間を通したスタミナは他の力士をしのぐものがある。今場所は期待してもいいか。