周囲に煽られ金宣言 錦織「五輪出ないで」の声なぜ出ない
それにしても不思議なのは、そのようなやっかいな箇所に故障を抱える錦織に対し、メダル取りを煽る声はあっても、「無理はせずに欠場しろ」という声がまったく聞かれないことだ。スポーツファンの吉川潮氏(作家)が言う。
「スポーツマスコミは選手生命や将来を考えずに、故障や少々の病気で試合に出る選手を歓迎し、勝っても負けても美談にする。会社のために尽くした昭和のモーレツサラリーマンたちにはそんな記事は受けても、今の若者には理解されない。残業が続けばブラック企業という時代です。もっとメディアは選手に対しても冷静な目を持たなければならないのに、相変わらず、五輪に出ろ! メダルを取れ! です。錦織本人は多くのスポンサーを持っている。契約金でがんじがらめですから、簡単に五輪を欠場するとは言えない。その点についてはマネジメントの問題もあるでしょう」
早大スポーツビジネス研究所の松野弘会長も「この国のスポーツマスコミはおかしい」と言って、こう続ける。
「日本は先進国なのだから、本来なら五輪のメダル数なんてどうでもいい話。とっくに卒業していなければおかしいのに、JOC(日本オリンピック委員会)は、五輪のたびにメダル獲得数にこだわる。リオは20年東京大会に向けたステップと考えロンドン大会の倍の金14個を含め、30個以上のメダルを目標としている。メディアはそんなメダル獲得合戦を批判もせず、逆に過剰な五輪報道で国民を煽り、熱狂させるのが常。メディアのあり方もスポーツ後進国です」