中日1位・柳裕也 母が明かした孝行息子との“二人三脚”
夏の予選など節目の試合には、宮崎から神奈川へ向かった。
「来れる? 無理してない?」
柳は常に母を気遣った。
「大丈夫、絶対いくから」
薫さんは息子の試合をスタンドから見守ることを励みにした。
■府中にまつわる縁
高校2年の1月、柳はある社会人チームから誘いを受ける。
「働いてお金をもらいながら、プロを目指すよ」
柳は薫さんにこう告げた。薫さんは進路について自分なりに精いっぱい考えた結果だろうと思った。ただ、進学したい気持ちがあることもわかっていた。大学での出会いは大人になってからも財産になる。そう思ったからこそ「大学へ行きなさい」と伝えた。
明大進学後も、折を見て神宮へ飛んだ。柳にとって大学最後の試合となった明治神宮大会の準決勝、決勝にも、1泊2日の日程で駆けつけた。
柳は高校、大学と私学だった。授業料は安くなかったし、家を出る分、仕送りも必要だった。薫さんは時間を見つけて幼稚園の手伝いなどをしながら生計を立てた。経済的な負担は決して小さくなかったが、学費は奨学金を借りて賄った。