中日1位・柳裕也 母が明かした孝行息子との“二人三脚”
「お父さんがいるという感覚で育ててきましたし、我慢をさせたくなかった。お金は少しずつ返していけばいい。私自身、今という時間を大切にしたいと思ってきました」
と、薫さんは言う。
柳が明大在学中のある日、薫さんは一人、野球部寮がある京王線の多磨霊園駅(府中市)に向かった。その日は晴天が広がっていた。街を歩いていると、20年前がフラッシュバックした。柳はこの地で生まれ、3歳まで過ごしたのだ。
中学時代の同級生だった博美さんと薫さんは高校卒業後、それぞれ宮崎から東京に出た。地元での成人式で再会、結婚して府中に居を構えた。信号や建物を目印に当時の記憶を思い返しながら、かつて住んでいたマンションへたどり着いた。
柳は幼少期を過ごした場所で4年間、プロ野球選手への夢を追いかけることになった。94年に3314グラムで誕生、電車が好きで毎日、電車の模型を手に遊んでいた姿が昨日のことのように蘇った。薫さんは「不思議な縁を感じた」と振り返る。
晴れて夢がかなった柳は来年から拠点を名古屋に移す。新天地ではどんなことが待っているのだろうか。薫さんに楽しみが一つ増えた。