伊調パワハラ問題の背景 東京五輪で激化する教え子争奪戦
「コーチ論」の著書があるノンフィクション作家の織田淳太郎氏が言う。
「日本の女子レスリングの育ての親ともいえる栄氏は、6人の金メダリストを育て上げ、レスリング界の『天皇』のようになってしまったのかもしれません。伊調がどこで、誰の指導を受けようが、結果を残せばレスリング界にとっては喜ばしいことなのに、マスコミで報じられている言動は、選手の成績より、自分の立場を優先しているように思える。スポーツのコーチは脇役に徹するべきで、周囲に実績を持ち上げられて勘違いし、主役になったらトラブルになるケースが多いですね」
スポーツファンの菅野宏三氏(ビジネス評論家)は、「他の競技でも似たような事件が起こるかもしれない」といってこう続ける。
「東京五輪の注目度は、他国開催の五輪とはケタ違いです。選手にとっては代表になるか否か、メダルが取れるか取れないかは、その後の人生を左右すると言っても過言ではない。指導者にとってもそれは同じでしょう。教え子のメダルの色や数は、所属する競技団体での地位を上げ、講演やテレビ出演の数、本の出版などにも影響する。有望な選手はなるべく自分が抱えておきたいのは当然です。そればかりか、ちょっと教えたことがある選手がメダルを取れば『アイツはオレが育てた、助言した』という指導者が出てくるのではないか」