著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

観客を襲うファウルと「フライボール革命」の因果関係

公開日: 更新日:

 アルバート・アルモーラ・ジュニア(カブス)の三塁側方向に飛んだ打球が4歳の少女を直撃したのは、5月29日の対アストロズ戦での出来事だった。

 試合後の記者会見でアルモーラ・ジュニアが悲痛な面持ちで「回復を祈るだけ」と発言する様子が放送されると、球界関係者やファンからアルモーラ・ジュニアに共感する声が寄せられた。

 それとともに、今回の出来事は2018年に全30球団の本拠地で一塁側と三塁側のダッグアウトの端まで防護ネットを拡張した大リーグの取り組みが必ずしも十分ではないことを示唆している。

 しかも、今後も打球が客席に飛び込む機会が減ることはない。むしろ、より重大な事態が起きる可能性さえあるのだ。いわゆる「フライボール革命」の影響だ。打球速度と角度の関係を重視するフライボールの理論では、時速約158キロ以上、26~30度の角度で飛び出した打球は、安打になる確率が最も高いとされる。

■「バレル」に「EV」

 15年からは芯で捉えた確率を示す指標として「バレル」や、打者が打ち返した球の速さを測る「EV」(Exit Velocity:打ち返し速度)が導入されるなど、現在の大リーグでは打球速度が重視されている。

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