元代表主将・林敏之氏観戦記 歴史的勝利の最大の要因は…
アイルランド戦は試合会場の静岡エコパではなく、東京・武蔵野市で見届けた。武蔵野陸上競技場で開催されたパブリックビューイングのイベントに参加させていただき、ラグビー史に残る劇的勝利に酔いしれた。
勝利の最大の要因として、現ジャパンの「パス関連のスピードが速くなった」ことを挙げたい。
9―12で迎えた後半18分、大会前の南アとのテストマッチで負傷したWTB福岡が今大会初出場を果たし、トライを奪って逆転に成功した。相手自陣の深いところから左に展開していってトライにつなげたわけだが、CTB中村がWTB松島を飛ばしてCTBラファエレ・ティモシーにボールを送り、ラファエレはパスを受けた瞬間、左の福岡にスパッとパスを出した。その直後、相手選手のタックルを受けて倒された。もしパス出しのタイミングがコンマ1秒遅かったら、パス自体のスピードがコンマ1秒遅かったら、福岡のトライは難しかった。
もともとジャパンの懸案事項として<パススピードが遅い>ということがいわれていた。それがアイルランド戦ではスピードとともにタイミングの速さも高いレベルを保ち、ジャパンの継続的な攻撃につながった。