野村克也氏が史上最高のプロ野球OBであると断言できる根拠
しかし、それでも野村克也はメディアをはじめとする公の場に何度も姿を現してきた。普通、どれだけ偉大な野球人であろうとも、高齢になるといわゆる隠居状態となって、特別なインタビュー企画やイベント出演などでしかその姿を拝めなかったりするが、野村克也は本当に亡くなる直前まで、文字通り老体にむちを打ちながら野球の解説やテレビ番組の準レギュラー出演などをこなし、隠居期間のようなものを一度も挟むことがなかった。84年間に及ぶ生涯をまさに野球一色に染め上げ、衰えていく過程をも多くのファンに公開した。こんな野球人は他にいないのではないか。
これは同時に、それだけプロ野球OBとしての野村克也の言動に需要があったことも意味している。プロ野球界が熾烈な競争社会であることはよく知られたことだが、それはOB界でも同じことだ。特にOB仕事の中でも一番の花形である地上波テレビ出演枠は極めて少数だから、その椅子取り合戦の激しさは想像に難くない。それを踏まえて野村克也のメディア露出量を見ると、彼は昭和から令和にかけて、ユニホームを着ていない間は常に野球評論家、はたまた野球タレントとしての需要を高レベルで維持してきた。年々増えていく新たなOBたちとの競争に勝ち続けてきた。
そういうプロ野球OBとしての需要・人気という意味では、野村克也はONを超えて史上最高と言えるかもしれない。選手・監督としての実績や野球についての見識だけでなく、そこに豊かなタレント性も備わっていたのだから、これぞ不世出の偉人と言える。