五里霧中の東京五輪 カギ握るのは次期IOC会長候補のコー氏
2007年8月に大阪で開かれた世界陸上選手権は蒸し暑く、メディア対応の役員が次々と倒れた。
会場の長居スタジアム前の回転寿司店に逃げ込むと、カウンターに見覚えのある外国人が座っていた。スティーブ・オベット、モスクワ五輪800メートルの金メダリストで、英国を代表する中距離の英雄。寿司屋の店主によれば「よう来はるお客さんですわ」とすっかり常連で、陸上マニアと写真に納まり「安くてうまい」と上機嫌だった。
80年代、オベットと世界記録を交互に塗り替えた宿敵が、同じ英国のセバスチャン・コーだ。モスクワの800メートルに続く1500メートルでは、コーがオベットに勝った……2人の対決がボイコットでしらけた大会を熱く盛り上げた。
開けっ広げで辛辣なオベットに対し、コーはインテリ然とした風貌で控えめ。引退後は国会議員を務めてバロン(男爵)ももらい、ロンドンオリンピック組織委員長から15年に世界陸連(WA)会長に就任している。
東京オリンピック2020の開催の延期が決まった。コロナの前に来年のことなど何も分からないが、カギを握るのはセバスチャン・コーだ。