田淵が西武に移籍した途端、自宅に請求書が送られてきた
巨人に次ぐ人気を得た阪神の選手は、観客があふれる甲子園の歴史の中で生きてきた。一方、山内一弘の所属するパ・リーグの大毎、いや、ほとんどの球団の選手は、閑古鳥が鳴くスタンドを見てはため息をついた。
「だからさ、阪神に来た時に見た甲子園球場の超満員のスタンド、熱烈なファンの、熱狂的な応援に『そら、タニマチも選手を連れ歩きたくなるわな』と思い知った」と山内は言った。
しかし、単なる道楽や虚栄心で選手を連れ回す連中ばかりではない。というか、むしろ商売や利権のために選手を利用しようとするヤカラの方が圧倒的に多い。
東京六大学の華・田淵幸一が阪神に入団するや否や、甲子園に住むある歯科医が彼に擦り寄ってきた。「スポーツ選手は健康な歯を維持せにゃあダメ。ましてキミは4番打者だ。バットを振るときには歯をものすごく噛みしめるだろ? だから1週間に1度、いや、毎日でも構わないから歯を見せに来なさい」と言い、時には自身が球場へ足を運んだ。
■球団社長におべっか