スカウト活動解禁 高校生投手は成長度より大切なものが…
「投手で言えば腕の振りさ。柔らかく、ムチのようにしなった腕が、素早く、体に巻きつくように振れているかどうか。体重移動がうまくできていると、体は前に出ず、腕だけが自然と前に出ていく。車に乗っていて急ブレーキをかけると、嫌でも体が前に突っ込むだろう。あの感覚だ。踏み出した足がブレーキで、腕は前に突っ込む体のようなものさ。野手のバットスイングは直せるが、投手の腕の振りは簡単に直せるものじゃない。腕の振りが理にかなっていれば、現時点で大したことなくても、伸びしろがある。逆に言えば、そういう投手を見つけてくるのが、おまえたちの仕事だろうが。去年の佐々木(現ロッテ)や奥川(現ヤクルト)は、だれが見てもドラフト1位候補だし、腕の振りも文句なしだったからな」
要するに、成長度より何より、現時点でプロで活躍できる資質をもっていることが大切で、それを見極めるのがスカウトの仕事というのだ。
オレはこの日、部長と一緒に左右の両先発を見て、右腕の方に可能性を感じた。プロ志向が強いとも聞いているし、そのことを部長に言うと、「だから成長度とかプロ志向とか、そういうのは二の次だって言ってるだろう。おまえに話したことを頭に入れて、もう一度、2人をよく見ろ。オレが評価したのは左だ」と言って席を立った。
(プロ野球覆面スカウト)