甲子園交流試合に登場 プロ注目の右腕3人の見どころと展望
8月10日に開幕する甲子園高校野球交流試合。現在、全国の独自大会を取材中のスポーツライター・安倍昌彦氏が、今秋ドラフト候補に挙げられている3人の注目右腕の見どころを語った。
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複数球団が1位候補に挙げている明石商(兵庫)の中森俊介は、16日の第1試合で桐生第一(群馬)と対戦する。7日の兵庫県独自大会・神戸第一戦で延長十回から登板。サヨナラ負けを喫したが、安倍氏は「昨秋からさらに成長を遂げていると感じた」とこう続ける。
「常時145キロ前後を計測する速球、いつでもストライクを取れる3~4種類の変化球があり、守備、クイックを含め、投手として必要な条件をすべて兼ね備えている。昨年の奥川恭伸(星稜→ヤクルト)レベルになってきた。ただ、顔つき、投げっぷり、囲み取材の語り口を見て一つだけ心配なのは、いい球を投げているにもかかわらず、完璧を求めすぎるようにも見えた。気楽な気持ちで思い切り腕を振ることだけに集中して欲しいなという思いはあります」
中森と同じく、1位候補の中京大中京(愛知)の高橋宏斗は、12日に強力打線を誇る智弁学園(奈良)と対戦する。
「エンジンの大きさは高校ナンバーワン。今の高校生には珍しく完投で勝てる持久力、瞬発力がある。智弁3年生の大橋誠斗、2年生の前川右京の2人の強打者との対戦が見どころです。投げるイニング数が短ければ、自己最速の153キロを更新し、150キロ後半を計測するかもしれません」
安倍氏が昨秋からひときわ、伸びしろを感じたというのが17日に尽誠学園(香川)と対する智弁和歌山(和歌山)の小林樹斗。6日の独自大会決勝では最終回に登板、自己最速の152キロをマークした。
「昨秋は力みが目立ち、カウントを悪くしてストライクを取りに行った球を狙い打ちされ、失点するケースがあった。しかし、今夏は八分の力で10の力の球を投げられるコツを掴んだ。中森と互角かアタマ半分くらい抜きん出たなという印象さえ持った。1試合のみですが、甲子園というスケールアップした舞台でどんな投球を見せるのか。非常に楽しみです」
プロがコッソリ注目する投打の隠し玉
「体は大きくないが、下半身がしっかりしている。肘の使い方がしなやかで、キレのある球を投げ、制球も悪くない」
セ球団のスカウトがこう言うのは、17日に出場する白樺学園(北海道)のエースで4番を担う片山楽生だ。
178センチ、83キロの右腕は、昨秋の明治神宮大会でベスト4進出に貢献。当時、最速142キロだったストレートはコロナ禍の自粛期間を経て、6キロ増の148キロまで伸びた。
「6日の独自大会ではクラーク国際相手に2回途中5失点で降板しましたが、冬に白飯を1日4合食べ、下半身がさらにドッシリした。制球力があって伸びしろもあり、将来性は十分です」(前出のスカウト)
野手では、国士舘の正捕手・吉田健吾(179センチ、83キロ)。2年春のセンバツに出場経験があり、特に守備の評価が高い。パ球団のスカウトが言う。
「肩が強い上に、フットワークが良い。体にバネがあって身体能力の高さを感じさせる。中学時代に所属した狭山西武ボーイズは、代表の小野剛氏、監督の福井敬治氏が巨人OBで、今年から『OBスカウト』に就任した。当然、巨人あたりは目をつけているでしょう」
高校野球ファンの中では、ルックスも良いと評判。交流大会は1試合のみとはいえ、投打の隠し玉は甲子園で存在感をアピールできるか。
【写真】静寂の中、2020年甲子園高校野球交流試合が開幕(12枚)