全仏はクレーコート…錦織に懸念される心身のスタミナ不足
復帰後の最大のテーマは自信の回復だ。テニスはベースライン、サイドラインぎりぎりにいかに強いショットを打ち込むかがカギ。これまで日本選手が世界で勝てなかった一因に学校テニスが挙げられる。団体戦では、ライン際に勝負球をぶち込むことよりとにかく返す安全策を叩き込まれ、その習慣が海外では通用しないのだ。米国育ちの錦織にそのトラウマはなく、左右に打ち分ける技術もセンスもある。時間の問題ともいえるが、気になることがある。
ネットプレー、サーブ&ボレーの多用が指摘される。だが、錦織はビッグサーバーではなく、むしろラリーを操る多彩なショットメーカーで、ネットプレーはこれまでも取り入れていた。復帰後はネットに出るより、出させられている印象で、その理由としてスタミナ低下が考えられる。
■持続する闘争心
ローマでムゼッティに敗れた試合では、強烈なスピンに押され、必死に切り返しては若い脚力のカウンターを浴びた。
長いラリーの主導権を握れず、ハンブルクの第1セットは0―6、第2セットには40―15から一気に連続4ポイントを奪われてブレークされる場面もあった。
暮れには31歳で、もともと体力はないが、問題はメンタル。全仏は5セットマッチの長丁場だ。
諦めない、切れない、持続する闘争心を、このパリで取り戻し来季へつなげる――ミルニー新コーチの仕事はサーブ&ボレーの伝授などではない。