大坂なおみの行動はスポーツの政治利用で五輪プロ化の帰結
新型コロナウイルスの感染拡大後、初めて開かれるメジャー大会として注目されたテニスの全米オープンは、ポストコロナに向けて新たな問題を持ち込んだようだ。大坂なおみが掲げたBLM(ブラック・ライブズ・マター)である。
コロナ中断中の米国内では、警察による黒人への過剰取り締まりをきっかけに抗議行動が広がった。大坂も「テニス選手以前に黒人女性」と前哨戦から人種差別の現実を訴えた。全米では快進撃を続けながら、黒マスクに黒人被害者の名前を書いて世界に発信した。
その是非はともかく、これまでの常識では彼女の行動はスポーツの政治利用になる。
■IOCがどう判断するか
米国内で黒人の民権運動が盛んだった1968年、メキシコ五輪の表彰台で抗議行動に出た黒人選手は即刻、選手村を追放され、米国選手団からも外された。
いまの米国内には大統領選イヤーの高揚した空気もあるだろう。全米テニス協会は「BE OPEN(解放)」をうたって試合外での人種差別への抗議行動を容認しているのだが、月末に控える全仏、さらには来年に東京大会を準備するIOCがどう判断するかは別問題になる。世界にはあらゆる差別があり、人種差別を肯定する人はいない。ただ、黒人差別に限ればかなりのアメリカ事情で、アジアや日本での理解には限界がある。大坂に対し「日本人でありながらあまりにもアメリカ的ではないか」と疑問の声があるのも事実だ。