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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

“田沢ルール”に日米で温度差 なぜメジャーで話題にならず

公開日: 更新日:

 日本では「田沢ルール」は田沢の問題が解決した後も関係者の大きな注目を集め、申し合わせそのものが廃止された現在も、公正取引委員会が「田沢ルールは独禁法違反のおそれがあった」という見解を示した。

 これに対し、米国では「田沢ルール」が話題となる機会は乏しい。わずかに2012年のドラフト会議の直前に、当時花巻東高校3年生であった大谷翔平が日本のドラフトを拒否して直接大リーグ球団と契約する可能性が取り沙汰された際、日本のアマチュア選手が置かれた状況を説明するために「田沢ルール」が「タザワ・ペナルティー」として紹介された程度である。

 日米の球界の「田沢ルール」に対する態度の差は、日本側が人材を提供する側であり、大リーグが受け入れ側である点に由来する。

 プロ球団のドラフト会議で指名される水準に達している選手に限りがある以上、有力選手が一人抜けることは、少なくとも戦力補強という点で各球団の選択肢を狭める。

 しかし、毎年各球団がドラフト会議で合計1500人以上を指名する大リーグにとっては、日本のアマチュア選手も多くの高校、大学の選手と同じ、「多くの選手の中のひとり」でしかない。

 このように考えれば、米国において「田沢ルール」の廃止が話題とならなかったのも当然のことだったのである。

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