森会長だけじゃない!日本スポーツ界に今も蔓延る女性蔑視
女性理事はたったの4人
国士舘大非常勤講師でスポーツライターの津田俊樹氏は、「森会長のような考えは国内競技団体の幹部にも根強いのではないか」と、こう語る。
「1994年に採択されたブライトン宣言の主たる目的は、スポーツに女性が最大限に関わることを可能にし、尊重することで、スポーツ文化を発展させること。国内競技団体のトップはほとんどが男性。日本バスケットボール協会の三屋(裕子)会長も、Jリーグ初代チェアマンで前バスケ協会会長の川淵三郎氏のバックアップがあったからです。競技団体の女性理事もまだまだ少なく、JOCの18人の理事(常務を除く)の中で女性は4人(小谷実可子氏、高橋尚子氏、山口香氏、山崎浩子氏)。これでは意見できる雰囲気ではないでしょう」
JOCは2019年9月の理事会から、山下泰裕新会長の提案で報道陣をシャットアウトしている。山下案に反対した4人の理事は、先に挙げたアスリート出身の女性だった。
「4人の女性は勇気があります。柔道の山口理事やマラソンの有森裕子氏、陸上長距離の新谷仁美選手ら、自分の意見をはっきり述べる女性も出てきましたが、まだまだ少数。山口理事はコロナ感染拡大で東京五輪の中止や延期論が出始めた昨年3月、延期を主張。山下会長は不快感をあらわにした。山下会長からすれば女性理事の発言だっただけに、余計におもしろくなかったのではないか」(前出の津田氏)
内閣府男女共同参画局は「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」を掲げている。スポーツ庁による競技団体の「ガバナンスコード」では、女性理事は40%以上の登用が目標だが、2019年2月に行われたスポーツ庁の「スポーツ団体女性役員カンファレンス」でJOCの山口理事は「スポーツ界の現状はJOC(女性理事)18.2%、NF(国内競技連盟)の平均が12.6%(いずれも当時)」と語っていた。
■世界からズレている
前出の溝口氏が言う。
「過去の歴史を振り返れば、モスクワ五輪ボイコットの決定の際、選手たちは競技団体のトップにあらがうことができず、政治に翻弄された。全柔連では、相次ぐ子どもたちの柔道事故や指導者の暴力の問題が放置されてきました。かつての全柔連は、男性中心のトップのイエスマンで構成され閉塞的な『内輪のルール』のみによって運営されていました。トップに忖度し、改善点や問題点を進言できないことが自浄能力やガバナンスの欠如につながったのです。先ほどイギリスとフランスの友人が現地でニュースを見て連絡をくれました。日本社会はなんてヒエラルキー(階級制)で古い体質なんだ、と。日本のスポーツ界は人事的な面を見ても国際的なスタンダードから若干ズレているような印象も受けているようでした」
森会長が偉そうに頭を下げた前日3日、AP通信などによれば、180もの人権団体が来年2月に開催予定の北京冬季五輪について、中国の新疆ウイグル自治区などでの人権抑圧を問題視し、各国首脳にボイコットを呼び掛けた書簡を発表した。女性蔑視も人権問題だ。コロナ禍の中で東京五輪が開催されても、ボイコットする選手が多数出てくるのではないか。