高畠導宏さんが原点になった 両打ち転向と指導者のイロハ
スイッチヒッターに挑戦していた私は、連日の打ち込みで自暴自棄になりかけていた。そんな時、当時の打撃コーチだった高畠導宏さんが、「1週間で上達するなんて、すごいことだ」と私を褒めてくれた。
本当かなと半信半疑な部分があった半面、褒められて悪い気はしない。短期間で上達しているんなら、と再び前向きな気持ちになれた。
もしそこで、「まったく上達しねえなぁ」などと、後ろ向きな言葉を聞かされていたら、練習に身が入らなかったことだろう。プロなんだからやって当たり前ではあるのだが、人は気持ちで動く生き物でもある。
■いろんな引き出し
高畠さんというコーチは当時の私のような初めて指導する若手に対してまずは、ああしろ、こうしろとは一切言わない。じっくりと観察をし、絶妙なタイミングで選手を褒める。そこからようやく、技術指導を施しつつ、選手を伸ばしていくのだ。他の選手への指導を見ていても、これが合わないと思ったら、違うアプローチを提案していた。いろんな引き出しを持っているコーチだった。