バレンタイン監督1年目のキャンプ 言葉の壁にブチ当たる
2004年から09年までの6年間、ボビー・バレンタイン監督のもとでヘッドコーチを務めた。
ヘッドコーチとは、監督とコーチのパイプ役であり、選手とのクッション役でもある。監督の意向を各コーチに伝達するだけでなく、私の場合は、ボビーが決めた打順を選手に伝え、状況によっては納得してもらうために話し合いもした。
就任1年目の春のキャンプ。練習メニューの細部については、その日ごとにボビーと一緒に決めた上で、各コーチに伝えていた。会話のやりとりは、通訳を介して行った。
ある日のキャンプ開始直後、メニュー表が張り出されて間もなく、ボビーから「俺はこんなことをやれとは言っていないぞ」と言われ、戸惑った。私は「いや、監督はそう言ってましたよ」と言いかけて言葉をのみ込んだ。
言った言わないの水掛け論になるのは不毛だし、私としても、理解したつもりになっていたかもしれない。いわゆる言葉の壁にブチ当たったのだ。
その場は私から「分かりました。今後はきちんと確認します」と頭を下げた。以降はボビーに「ここはこういう感じでいいですか?」と一つ一つのメニューについて、丁寧に確認するようにした。ボビー自身、監督としての年数を経るにつれて日本語を理解しているとの自負もあったけれど、分かったつもりになるのはトラブルのもと。細やかなコミュニケーションを取るように心掛けた。