オリンピアンの経済学者が指摘「東京五輪中止宣言はスポーツ文化、ビジネスモデルの刷新の機会に」

公開日: 更新日:

杉本龍勇氏(法政大学教授/バルセロナ五輪陸上短距離代表)

 バルセロナオリンピックに出場した私は五輪を最高の大会と位置付けています。ただ、東京五輪に関しては大会参加者への感染防止策、感染者が出た場合の対策などを考慮すると、運営側の責務、スキルを疑問視せざるを得ません。

 中止にすれば経済的に大打撃を負うとの指摘もありますが、経済効果は十分に得られています。問題の放映権に関しても、中止になれば各局とも五輪中継の代わりに他の番組を放映するはずです。

 当初、五輪の収益構造で見込んでいた広告収入は入らなくても、他の番組で代替した場合、採算はともかく、番組スポンサーからの収入はあるはずです。IOC過去の大会のアーカイブの使用権を認めて、名勝負、名場面などの放映も不可能ではないでしょう。

 ワールドワイドスポンサー14社は10年契約を結んでおり、これまでもオリンピックのマーク、シンボルアスリートを十分に活用して企業のブランドイメージの向上につなげてきました。東京五輪のオフィシャルスポンサーなどにしても、1年延期になり、むしろ従来より1年長く企業価値向上のためのプローモーションを展開してきた。すでに多くの企業がスポンサーとしてのメリットは得ているはずです。今の状況で五輪開催を強行するのは、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境、社会、ガバナンスを意識した取り組み)の観点から、企業にとってはむしろ逆効果となることが予想されます。

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