オリンピアンの経済学者が指摘「東京五輪中止宣言はスポーツ文化、ビジネスモデルの刷新の機会に」
■経済的損失は最小限で食い止められる
インフラ投資にしても全て完了しました。会場建設、道路整備などは大会前に済んでおり、今更持ち出すことではありません。むしろ、招致の仕方に問題があった。「今回の五輪を契機にインフラ投資して、インターネット環境も整備するなど、新たな経済基盤をつくり直して成長につなげる」として招致に乗り出していたら、今の状況はまるで異なっていたはずです。
開催費用が高騰するのは十分に予想できたことで、招致の際「世界一コンパクトな五輪」を掲げ、過剰な投資はしないとアピールしてしまったために反発を招いているのです。
政府と組織委が勇気を出して「中止」を宣言すれば、肥大化した五輪を見直す機会になり、大きなレガシーの創出になります。
東京大会の中止が、五輪の運営の仕方、放映権料、スポンサーのあり方も含めて、今後のスポーツ文化、スポーツビジネスのモデルを刷新する絶好の機会となるはずです。歴史の転換点として語り継がれるでしょう。
▼杉本龍勇(すぎもと・たつお) 1970年11月25日生まれ。50歳。静岡県沼津市出身。法政大学在学中、92年バルセロナ五輪に出場し、4×100メートルリレーでアンカーを務め、6位入賞に貢献した。ドイツ留学、中京大学大学院博士課程を修了し、現在は法政大学経済学部教授。