東京五輪「途中中止」の現実味…宣言発令、無観客でも強引開催が招く医療崩壊へのカウントダウン
東京の感染状況は深刻さを増している。7日の新規感染者は920人に達し、菅政権は、沖縄の延長に加え、東京にも8月22日まで「緊急事態宣言」を発令せざるを得なくなった。宣言を出してでも、五輪を強行したいようだが、それでも“途中中止”に追い込まれる可能性がある。
◇ ◇ ◇
菅首相は「国民の命と健康を守れなければ、(五輪を)やらないのは当然だ」と明言している。これまで具体的な言及はなく、どういう状況を念頭に置いているのか分からなかったが、7日の閉会中審査で一端が見えた。
衆院厚労委員会で立憲民主の長妻副代表は「首都圏で1月に起こったように、ベッドが逼迫し、入院すべき人ができず、自宅やホテルの療養先でどんどん亡くなる。こういう局面が起これば、総理が言う『守れない』ということで、中止と理解していいか」と質問。田村厚労相は「仮に、五輪によって感染が増え、病床が逼迫して、国民の命を守れないというようなことを念頭に置きながら、総理はお話をされたのではないかと推察している」と医療崩壊の状況であることに言及した。
現在、感染急増中の東京で近く医療崩壊が起きるのは、あり得ないことではない。
第3波では、昨年の大晦日に新規感染者が1000人を突破し、1月7日にピークの2520人に達した。1月13日時点のコロナ患者は1万9124人。確保病床は4000床で入院できたのは3345人だった。9521人もが自宅やホテルで療養し、行き先が決まらない「調整中」は6258人に上った。その結果、自宅やホテルで死亡する悲劇が起きてしまったのだ。
医療崩壊なら国民の命を守れない
7日時点のコロナ患者は5360人と2週間で1700人以上増えた。確保病床5594床に対し、入院患者は1673人と余裕があるように見えるが、あっという間に逼迫する恐れがある。第3波よりも悪材料がいくつもあるからだ。
これからインド株(デルタ株)が流行の主流になるのは間違いない。インド株の影響を受け、対策の効果が弱ければ、新規感染者は1日4000人に達するとの試算がある。また、入院、重症化リスクも高いとされ、医療体制に負担がかかる恐れがある。
さらに、第3波は忘年会や正月など年末年始の行事が感染を拡大させたが、今回は夏休みと五輪が控えている。緊急宣言や無観客に踏み切ったとしても、国内外の人流増やお祭り効果は計り知れない。
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「五輪を開催すれば東京で第3波以上の医療崩壊が起きかねません。もし、菅首相が国民の命を守ると本気で思っているのなら、五輪は中止すべきです」
強引に開催にこぎ着けても、途中中止に追い込まれる可能性がある。まだ遅くない。やめた方が賢明だ。