糸原健斗は“ヤクザ監督”野々村直通氏の寵愛を受けた寡黙な小兵
糸原健斗(5年目・内野手・28歳)
「糸原は寡黙で存在感も薄い方だった。あんまり話す方じゃないし、いつも黙々と真面目に野球をしていた印象です」
昨季まで阪神の主将を務めた糸原についてこう語るのは、そのコワモテの風貌から“ヤクザ監督”の異名をとる開星高(島根)の野々村直通監督だ。糸原が3年時に春のセンバツ初戦で21世紀枠選出の向陽高校に敗れた際の、「末代までの恥」という発言が大きな波紋を呼び、監督を退任。その1年後に再就任も同年度限りで定年退職し、8年間の空白期間を経て、昨年から再び監督を務めている。
「糸原は私が舌禍で辞任することを聞いた時、30分ほど号泣したそうです。私としてはそりゃうれしいことですよ」(野々村監督)
■接触禁止を破って明大セレクションに同行
野々村監督は騒動の後、学校から野球部員との接触を一切禁じられていたが、人目を忍んで糸原と再会したのは夏の甲子園を終えた同年の8月のこと。明治大学野球部のセレクションに同行するためだった。
「校長先生に引率することを打診すると、『それはやめてくれ』と却下されました。ですが、彼のその後の一生に関わることです。明大の監督に挨拶したり、橋渡しをする役も必要でしょう。糸原のお父さんと3人で出雲空港に集合し、島根を発ちました。もちろん自費です(笑い)。4カ月ぶりに会った糸原ですか? それまでと変わらず、こっちが話しかけないとしゃべりませんでした。寡黙な男ですからね」(野々村監督)