星野監督から湯治先の温泉宿に「トレード決まったぞ」と電話がかかってきた
巨人の捕手は山倉和博さん、有田修三さんの2人体制。巨人の監督に復帰した藤田元司監督は、中村武志、大石友好さん、大宮龍男さんという強力な捕手陣を擁し、私を外野に回した星野監督に対し、解説者時代から、「巨人に中尾をもらえるなら、私なら誰でも出す」と話していたそうだ。特に中継ぎとして一軍と二軍を行ったり来たりしていた斎藤雅樹を私の強気なリードで刺激したい考えもあったと聞いた。
一方の西本は80年から6年連続2ケタ勝利。81年には沢村賞を受賞していた。しかし、この頃は衰えを見せ始めていて、首脳陣とのゴタゴタも報じられていた。それでも星野監督は西本の負けん気を高く買っていた。
86年オフの落合博満さん1人と牛島和彦、上川誠二ら4人の大型トレードに続き、翌87年オフも大島康徳さん(日本ハム)、平野謙(西武)のレギュラー2人を放出する大胆なトレードを敢行した。
星野監督の時代ではないが、85年に田尾安志さんが西武へトレード移籍。92年オフの宇野勝(ロッテ)も含めると、星野監督が現役時代に一緒にプレーしたほとんどの主力が中日から放出されたことになる。ここに「ぬるま湯体質から脱却したい。中日を生まれ変わらせたい」という星野監督の強い意思が表れている。