フィギュア羽生結弦 北京で「4回転半」失敗なら…五輪3連覇でも大技成功へ現役続行
王者がようやくリンクに姿を現した。
男子フィギュアスケートで94年ぶりの3連覇を目指す羽生結弦(27)が7日、翌日のショートプログラム(SP)に備えて会場の首都体育館に隣接するサブリンクで調整した。
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海外メディアを含む約100人の報道陣が見守る中、4回転サルコー(4S)、4回転トーループなどを跳んで、氷の感触を確かめた。途中からはフリーで使用する「天と地と」の楽曲に合わせて本番さながらの演技を披露。冒頭で史上初の成功を目指すクワッドアクセル(4A=4回転半)を試したが、バランスを崩して転倒。続く4Sも着氷を乱したものの、その後は大きなミスはなく、35分間の練習を終えた。
6日に現地入りしたばかりの羽生は「課題だったり、良かった点だったり、いろいろありますけど、きょうはきょうでいい感覚だった」と手応えを口にした。金メダル取りと4A成功の両立については「自分の中ではイコールだと思っている。SPに向けてまずは集中したい。まずはSPに対してできることを積み重ねていきたい」と、初日を見据えた。
昨年末の全日本選手権で6度目の頂点に立った際には「(本番直前の)6分間練習前から泣きそうで……。あと何回、こういう景色が見られるだろう」と発言。これを受けて「北京でのチェン(米)との勝負を最後にリンクを離れるのではないか」と引退の可能性を報じる海外メディアは少なくなかった。
2014年ソチ五輪でアジア勢初の金メダルを獲得してから8年。19歳で初めての大舞台を踏んだ羽生も今年の12月で28回目の誕生日を迎える。男子フィギュアスケーターのピークといわれる25歳を過ぎているだけに、宿敵チェンとの勝敗にかかわらず、北京を最後にスケート靴を脱ぐという見方だ。
念願は3度目の五輪金よりも大技4Aの成功
もっとも、羽生は「ソチ、平昌までが思い描いていた夢の舞台で、3連覇したいとか考えていなかった。(平昌後は)毎年、毎試合、ここで4Aを跳ぶんだと思って全力を尽くしてきた」と話している通り、真の狙いは3度目の頂点よりも大技の成功だ。
平昌五輪以降は、4Aの実施に向けて本格的なトレーニングに着手。この2年間は、コロナ禍で練習拠点のカナダ(トロント)に入国できず、ブライアン・オーサー・コーチの指導も受けられなかった。そのカナダ人コーチの「大技よりも安定感のある演技で勝負すべきだ」との助言に耳を貸さず、仙台市内のリンクで一人、4Aの練習を繰り返してきた。今季開幕に向けた急ピッチでの調整が災いし、右足首を痛めてGPシリーズ欠場を強いられた。
今大会の羽生はオーサー氏が北京の会場にいながら、コーチ不在で本番に臨む。オーサー氏が「彼の決断」と説明したように、本番直前まで演技構成で意見が一致しなかったのだろう。
仮に北京のリンクで完璧な4Aが跳べなくても、今年3月には世界選手権(フランス・モンペリエ)が控えている。羽生にとって世界選手権は金2個を含む計7個のメダルを獲得している験のいい大会だ。
「(4Aに取り組んでから)モチベーションや覚悟が変わった気がしている」と話し、この日改めて「難しいと思いながら、やっぱりどうしても達成したい目標」と言った羽生にとって最終目標は世界の頂点よりも大技の完成。すでに五輪は連覇しているだけに「五輪」より何より実戦で「4A」を成功させたいのだ。今大会でチェンを下して表彰台の真ん中に立っても、4Aに失敗すれば、モンペリエのリンクで再び、挑むことになる。