シーズン初勝利の試合直後、投手コーチに言った「肘が痛くて…もう投げられません」
1991年のキャンプ中のことだ。
前年は開幕投手を務めたにもかかわらず、10勝11敗1セーブ。牽制がボークと取られてできなくなったばかりか、ピッチャーライナーを左膝に当てて約1カ月間、戦列を離れた。新人だった野茂英雄が最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠を獲得。自分も頑張るしかない、もう一度、本来の投球を取り戻そうと、目の色を変えて投げ込んだのが影響したのか、左肘に痛みを感じるようになった。
■顔を洗うのも苦痛
オープン戦、開幕……時間が経っても状態は一向に良くならない。車のハンドルを切るのも、ネクタイをしめるのも、顔を洗うのも苦痛だった。
この年も開幕投手を務めたものの、ひとつも勝てないまま1カ月が過ぎた。肘は痛かったけれども、1勝するまでは絶対に音を上げないと、半ば意地になっていた。
そして5月3日。藤井寺球場で行われたロッテ戦に先発、5回3分の2を無失点に抑えて勝利投手に。ようやくシーズン初勝利を挙げてホッとしたような部分もあったに違いない。冷静に考えたら、左肘の痛みはかなり深刻で、このまま投げ続けることができるわけがないと思った。