シーズン初勝利の試合直後、投手コーチに言った「肘が痛くて…もう投げられません」
当日はデーゲーム。試合終了後、チームは翌日から敵地で行われる西武戦に備えて移動する。その日に先発した私は遠征メンバーに入っていなかったけれども、他の選手たちは荷物出しで慌ただしい雰囲気だったことは覚えている。
なんとか1勝を挙げたものの、これ以上、チームに迷惑をかけるわけにはいかない。
私は首脳陣に正直に状態を報告すべきだと思った。そしてトレーナー室で皆川睦雄投手コーチに言った。
「申し訳ありませんけど、肘が痛くて……もう、投げられません」
すぐに首脳陣の話し合いが行われ、詳しい検査が必要だし登録を抹消しようということに。
レントゲン、MRI、造影……いくつもの検査をした結果、医師から告げられたのは「左肘内側側副靱帯損傷」。肘の内側の靱帯が傷ついているとのことだった。
「靱帯は伸縮性があって、輪ゴムみたいなもの。輪ゴムを1万回以上、こうやって伸縮させればビロビロになってくるでしょう。つながってはいるんだけど、伸びてしまっている状態です」という説明を医師から受けた。
リーグ優勝までの3年間の投球回数は700を超え、完投数は58に及んだ。
いずれ故障するのではないかという予感はあっただけに、ついにきたかという感じだった。
保存療法か手術。選択肢はこの2つだった。 (つづく)