高校野球「夏の地方大会」で番狂わせ続出…強豪や春の王者が初戦で消えるカラクリ

公開日: 更新日:

大阪桐蔭「連勝ストップ」でむしろ喜んだ理由

 春夏甲子園で歴代最多の68勝を挙げた智弁和歌山名誉監督の高嶋仁氏もこう言う。

「春に優勝したことによる慢心や達成感というのは確かにあります。私が監督をしていた頃は、センバツに出た後は必ず、チームを壊してつくり直していました。レギュラーも補欠も全員ひっくるめて、体力づくりからやらせる。そこで残れた選手をレギュラーにする。たとえ、もともとレギュラーだった子が練習についてこれなくなっても、置いていく。そうやって危機感を与えなきゃいけなかった」

 高嶋氏は今年5月、智弁和歌山が近畿大会決勝で今春センバツ優勝校の大阪桐蔭を撃破した日に、敵将の西谷監督と会話を交わした。大阪桐蔭は当時、公式戦29連勝と他校を圧倒していたが、西谷監督は「早いとこ負けなきゃいけないんですよ」と話していたという。高嶋氏が続ける。

「勝ち続けるのは悪いことではありませんが選手は慢心しがち。それが肝心な場面で出てしまい足をすくわれてしまう。春季近畿大会の決勝戦のあと、大阪桐蔭の選手は悔しがっていましたけど、西谷監督は内心喜んでいたと思います。負けることによって、もう一度気が引き締まり、選手にも『クソ!』という気持ちが生まれますからね」

 コロナ禍の影響を指摘する声もある。高校野球に詳しいスポーツライターの美山和也氏は先日、日刊ゲンダイで「今年の高校3年生はコロナ初年度の20年に入学した世代。コロナ前と比べて球児の練習量は半減していると言っても過言ではありません」と指摘した。前出の田尻氏もこう話す。

■コロナ禍で練習・実戦の機会減

「全体的な選手レベルの低下を指摘する声はあります。各地で選手をトレーニング指導している方の話によれば、夏前に計測した高校3年生の体力などの数値が、例年の高校2年生の秋ごろのレベルにしか達していなかったそうです。コロナ禍によって体づくりができず、実戦、練習の機会が減った影響だと考えられます」

 前出の高嶋氏も、「コロナの影響はあるでしょう」と、こう続ける。

「今年のセンバツの前には、和歌山県の方から『県外への遠征禁止。練習は学校が休みの日でも午前の3時間のみ』とお達しがあった。こうなると、普段から練習試合をバリバリやる強豪校と、そうでない学校の差が縮まる。その分、番狂わせが起きやすいかもしれません」

 今夏の甲子園もスリリングな展開になりそうな気配だ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    カブス鈴木誠也が電撃移籍秒読みか…《条件付きで了承するのでは》と関係者

  2. 2

    中日井上監督を悩ます「25歳の代打屋」ブライト健太の起用法…「スタメンでは使いにくい」の指摘も

  3. 3

    カブス鈴木誠也「夏の強さ」を育んだ『巨人の星』さながら実父の仰天スパルタ野球教育

  4. 4

    PL学園から青学大へのスポ薦「まさかの不合格」の裏に井口資仁の存在…入学できると信じていたが

  5. 5

    阪神・佐藤輝明「打順降格・スタメン落ち」のXデー…藤川監督は「チャンスを与えても見切りが早い」

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の肩肘悪化いよいよ加速…2試合連続KOで米メディア一転酷評、球速6キロ減の裏側

  2. 7

    新庄監督のガマンが日本ハムの命運握る…昨季の快進撃呼んだ「コーチに采配丸投げ」継続中

  3. 8

    ソフトB「二軍の帝王」を悩ます“王の庇護” 自己評価の高さとパワー、潜在能力は一級品も...

  4. 9

    ソフトB近藤健介離脱で迫られる「取扱注意」ベテラン2人の起用法…小久保監督は若手育成「撤回宣言」

  5. 10

    「負けろ」と願った自分を恥じたほどチームは “打倒キューバ” で一丸、完全燃焼できた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広末涼子容疑者は看護師に暴行で逮捕…心理学者・富田隆氏が分析する「奇行」のウラ

  2. 2

    広末涼子容疑者「きもちくしてくれて」不倫騒動から2年弱の逮捕劇…前夫が懸念していた“心が壊れるとき”

  3. 3

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  4. 4

    広末涼子は免許証不所持で事故?→看護師暴行で芸能活動自粛…そのときW不倫騒動の鳥羽周作氏は

  5. 5

    佐藤健は9年越しの“不倫示談”バラされトバッチリ…広末涼子所属事務所の完全否定から一転

  1. 6

    【い】井上忠夫(いのうえ・ただお)

  2. 7

    広末涼子“密着番組”を放送したフジテレビの間の悪さ…《怖いものなし》の制作姿勢に厳しい声 

  3. 8

    中居正広氏は元フジテレビ女性アナへの“性暴力”で引退…元TOKIO山口達也氏「何もしないなら帰れ」との違い

  4. 9

    大阪万博は開幕直前でも課題山積なのに危機感ゼロ!「赤字は心配ない」豪語に漂う超楽観主義

  5. 10

    カブス鈴木誠也「夏の強さ」を育んだ『巨人の星』さながら実父の仰天スパルタ野球教育