パ連覇オリ中嶋、2位ソフト藤本とも苦労人 「二軍監督経験あり」指揮官が今、強いワケ
我慢して使うが、無理はさせない
中嶋監督と藤本監督に共通しているのが、若手の起用だ。中嶋監督は監督代行となった20年途中から、二軍監督時代に目をかけていた若手を次々に抜擢。内野と外野を行ったり来たりの宗を三塁に固定し、昨季は入団6年目で前年まで一軍通算76試合だった杉本を4番に固定。32本を打ち、本塁打王のタイトルを取らせた。
今季も投手では昨季4試合登板の2年目右腕の阿部を勝ちパターンのリリーフに抜擢。この日の九回を託された阿部は44試合に登板して22ホールド、防御率0.61と飛躍した。同じように昨季2試合の5年目右腕・本田も42試合登板、昨季は育成登録だった7年目の近藤も32試合登板と復活させた。
若手はベテランに比べ、失敗することも多い。しかし、中嶋監督は一度の失敗で選手を見切ることはなく、挽回のチャンスを与え、ミスを取り戻そうとする姿勢を重視している。
「二軍は育成の場なので、選手を我慢して使わなければいけないこともある。それでも無理をさせて故障では元も子もないので、『いつ休ませるか』という判断も必要になる。さらに、勝利優先で失敗ができない大胆な采配も、ファームではできる。そうしたもろもろを一軍で指揮を執る前に二軍で経験できるのも、大きなメリットです。近年は二軍監督から一軍監督にステップ、というパターンが増えている。ヤクルトの高津監督も、いわゆる『野村の考え』を自己流にアレンジ。野村監督は常に勝利優先。使える選手は徹底的に使うが、高津監督は選手の体調などを考慮しながら、疲労をためない選手起用が特徴です」(飯田氏)
■指導者経験なし監督のチームは軒並み低迷
藤本監督も柳田や中村晃といった主力が新型コロナなどで次々に離脱した8月中旬から9月頭にかけて、若手を起用しながらチームを編成。8月15日から9月3日まで、指揮官が「筑後ホークス」「ちびっ子軍団」と呼んだナインの活躍もあり、10勝7敗と耐えしのぐどころか貯金をつくった。
今季、ソフトバンクの規定打席到達者は今宮と柳田の2人だけ。投手に至っては、規定投球回に達したのは千賀の1人だけだ。
「僕もソフトバンクでのキャリアは藤本監督とかぶっていますが、選手に厳しいことは言わない人。コーチや選手と常に話し合って『この選手はこう育てよう。こっちの選手はこの部分を伸ばしていこう』など、スタッフと相談した上で方針を決めていた。決して独断で判断はしない。ソフトバンクはベテランと若手の入れ替わりが難しい時期。だからこそ、今季はチーム全体を把握している藤本二軍監督の昇格となったのでしょう」(飯田氏)
同日、二軍はおろか指導者経験のないまま一軍を率いたロッテ・井口監督が試合後のセレモニーで電撃辞任を発表。監督5年でBクラス3度、Aクラス2度でユニホームを脱ぐことになった。同じように指導者経験のない中日の立浪、日本ハムの新庄両監督は最下位に沈んだ。その一方で、16年のキャリアで2度目のBクラスになった巨人の原監督は来季の続投が内定。次期監督候補といわれる阿部作戦兼ディフェンスコーチはまたも昇格見送りだ。いっそ、二軍監督に戻って「その時」を待った方がいい。