大谷翔平の打撃データに明らかな異変…「打球角度」と「チーム打撃」が本塁打量産を阻む
ライバル球団バッテリーが徹底研究
一方で、安打が出やすいとされるスイートスポット率(39.5%=打球角度8~32度)、ハードヒット率(55.8%=打球速度の初速が152.9キロを超える打球)はいずれもキャリアハイ。凡フライ率は10%以下だから、ライナー性の打球が増え、確実性は上がっているといえる。
これが現在、大谷が打率3割前後をキープしていることにつながっているとの見方はあるものの、スタットキャストによると、現時点では打球角度、打球速度などから予測する長打力に関する今季の期待値は、34本塁打を放った昨季と比べて10ポイントほど数字を落としている。
つまり、それだけ長打力が落ちているというわけだ。
「今季の大谷はWBC出場で例年よりも早めに体を仕上げて臨んでいるはずですが、打撃の状態はまだ万全ではないと感じます」とは、通算2081安打で名球会会員の評論家・山崎裕之氏だ。
「うまくタイミングが取れず、差し込まれて凡退するケースもある。2ストライクに追い込まれる場面も多い。何より打球角度が低いという点に、如実に表れていると思います。極端な打撃シフトが禁止され、安打ゾーンは確実に広がりましたが、相手投手が相当、研究しているように映ります。長打を打つポイントはどこか、角度が付くポイント、付かないポイントはどこか。徹底して研究されている。大谷自身、相手バッテリーの攻めにまだ対応しきれていないのではないか」
■WBCでの献身的プレー
昨季までの大谷なら、ある程度は自分の打撃だけを追求し、専念できる環境にあった。チームは8年連続でプレーオフ進出を逃すなど、序盤から低迷。トラウトやレンドンら主力に故障者が相次ぎ、大谷のバットに頼るしかない面もあった。
しかし、今季は主力が戦列に復帰。18試合を終えたばかりとはいえ、9勝9敗でア・リーグ西地区2位と健闘している。課題の投手力もチーム防御率3.52はリーグ6位。プレーオフ進出は決して絵空事ではない。
こうしたチーム状況も少なからず打撃に影響しているかもしれない。
大谷は開幕直前、極端な守備シフトが禁止されたことに関して、「アプローチをクリアできれば(3割を)十分に狙えるんじゃないか」と話すなど、打率や確実性の意識を高めている。WBC準々決勝のイタリア戦では、三回1死一塁の場面で初球に三塁線へセーフティーバントを決め、チャンスメーク。「勝利より優先するプライドはない」と、チームプレーを率先して世界一に。勝つことの喜びを改めて知っただけに、勝利を優先しなければいけない状況で、一発狙いの打撃を押し通すわけにはいかない。2ストライクに追い込まれて軽打に切り替えざるを得ないケースはもちろん、チーム打撃に徹する場面も増えるはずだ。
なお、21日のヤンキース戦では、相手の先発左腕コルテスの前に2度の二ゴロに倒れるなど、ヤ軍投手を打ちあぐね、3打数無安打1四球。2戦連続の音なしに終わり、チームは3-9で敗れた。打撃の確実性を求めれば必然的に本塁打は減る。今後もジレンマを抱えながらの戦いが続きそうだ。