元東映・ヤクルト大杉勝男 200HR偉業達成前に引退「この1本を皆さまの夢の中で打たせていただければ…」
とはいえ、チーム内で浮いた存在ではなかった。仲間の信頼は厚くリーダー的存在でもあったし、他チームの選手にも優しかった。ある時、若手投手からデッドボールを受けた大杉のところに申し訳ないという顔でその投手が謝りに来た。すると大杉は「コラッ! そんな情けない顔をするな。大丈夫だ。それにしてもおまえ、いい球を放るなあ。これからも頑張れよ」と励ましている。
■両リーグ200号本塁打の偉業達成前に引退
両リーグ200号本塁打こそ1本及ばなかったが、いずれも史上初となる同1000試合出場、同1000安打を達成する偉業を成し遂げて引退したのは83年。
「あと1本と迫っておりました両リーグ200本塁打、この1本を皆さまの夢の中で打たせていただければ、これにすぐる喜びはありません」
引退試合で語った言葉も、強面な大杉の口から出たからこそ味がある。暴れん坊でいながら根っからのロマンチスト。まさに愛すべき存在だった。
(清水一利/ライター)