「うちのやり方があるから。察してよ」北の湖引退を示唆した元増位山の苦渋

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「うちにはうちのやり方があるから……。察してよ」

 横綱の引退は理事長や後援者らへの報告が先なので、マスコミへの表明は翌朝が圧倒的に多く、三重ノ海のような例は少ない。三保ケ関親方の答えは、そうした事情との板挟みからか、つい誘導に乗ったのか。ともかく朝刊には「北の湖引退へ」の見出しが並んだ。

 2代目増位山は歌手としても多くのヒット曲がある。「察してよ」とは、演歌の曲名になりそうな「名言」だが、騒然とした緊迫感の中だからこそ生まれた一言だった。

 あれから39年。大相撲の取材現場は、時の流れとコロナ禍で様変わりした。いつか来る照ノ富士の「その日」はどんな光景になるのか。かつての大騒動を、それだけ大相撲が注目されて横綱の存在が大きかったからだと言ったら、取材する側の勝手な解釈だと思われるだろうか。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。

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