著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ワールドシリーズ7年ぶり高視聴率も…MLB機構が手放しで喜べない複雑事情

公開日: 更新日:

 ただ、視聴率や視聴者数の改善がNFLやNBAに人気の点で後れを取っている大リーグにとって、朗報とばかりは言えない点には注意が必要である。

 なぜなら、日本と同様に米国においても視聴者のテレビ離れが進んでおり、例えば18歳から34歳の約3割がテレビを全く見ていないという調査や、最もテレビを視聴しているのは65歳以上という報告もあるからだ。

 これは、球場の観客に占める中高年の割合が上昇し、家族連れや10代や20代の若者たちが観戦する率が低下しているという事実と軌を一にする。

 テレビ界を視聴率の面で支えている中高年層が主に今回のワールドシリーズの中継を見ていたのであり、若年層の興味を引き付けられていない可能性が高いのである。

 若年層は今後社会の中心となる者たちであり、球界にとっては長期にわたり球場や放送を通して重要な顧客となる存在となる。こうした層を取りこぼしたり、他の競技に奪われていたりすればどうなるか。

 現在は放送局と高額の放映権料契約を結ぶことで十分な収入を確保し、分配金を通して戦力の均衡と自らの権力の向上を図っている機構にとって、いずれ現在の手法が通用しなくなることを意味する。機構が視聴率の上昇を素直に喜べない理由はここにある。

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